ランナーの方に質問です。
『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹/著)
という本をご存知ですか?
村上春樹氏といえば、国内に限らず海外からも高い評価を受ける、日本を代表する小説家のひとりです。
その一方で、35年以上のランニング歴を誇る「ランナー」でもあります。
そんな村上春樹氏が、ランニングを軸に綴ったメモワール(個人史)、それが『走ることについて語るときに僕の語ること』という作品です。
この記事では、その本から学んだ「ランニングの継続」に役立つ、「3つのコツ」を紹介したいと思います。
- 「気持ち良い」と感じたところで走り終える
- 「走る理由」を大事にする
- 「他人」をモチベーションにしない
僕自身、ランニングを10年続けるランナーのひとりです。
走り始めた頃、この本に出会ったおかげで、ランニングを辞めずに続けることができました。
- ランニングを始めてみたけど、「うまく続かない…」
- ランニングに興味があるけど、「続けられるか心配…」
といった方は、ぜひランナーの大先輩である、村上春樹氏から「ランニング継続のヒント」を学んでいきましょう。
ランナーとしての村上春樹とは?
「村上春樹」というランナーについて、詳しく知っていた方が心に響く言葉も多いはず。
村上春樹氏の「ランニング経歴」や「走る理由」について先に説明していきます。
村上春樹の「ランニング経歴」
『走ることについて語るときに僕の語ること』に書かれた内容を参考に、村上春樹氏の「ランニング経歴」を以下にまとめました。
- 1982年の秋、33歳のときにランニングをスタート
(「専業小説家」として活動し始めた頃とほぼ同時期)
- 1983年、ギリシャにて初の「フルマラソン完走」を達成
(大会ではなく、個人で挑戦)
- 以来、1983〜2007年までの間にフルマラソン大会へ25回出場
(毎年1回はフルマラソンに参加している計算)
- その多くでフルマラソン4時間切り、通称「サブ4」を達成
(フルマラソン3時間半切り、通称「サブ3.5」も経験済み)
- サロマ湖100キロウルトラマラソン完走や、トライアスロンも経験
ランニング歴の長いランナーの場合、「フルマラソンを走ったことがある」という方も多いかも知れません。
ですが「25年以上、毎年フルマラソンに参加している」というランナーは、かなり珍しいはずです。
小説を書くにしても、フルマラソンに参加し続けるにしても、圧倒的な「継続力」が必要になるのは間違いありません。
まさに村上春樹氏は、「継続のプロ」と呼べる存在です。
村上春樹が「走る理由」
作中、村上春樹氏は「走る理由」のきっかけについて、このように述べています。
ところで、専業小説家になったばかりの僕がまず直面した深刻な問題は、体調の維持だった。(中略)これからの長い人生を小説家として送っていくつもりなら、体力を維持しつつ、体重を適正に保つための方法を見つけなくてはならない。
村上春樹 著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋 2010年)pp.56-57.
小説を書くための「体調や体力の維持」を目的に走り続けているわけですね。
ではランニングの継続に対し、「どのような考え方」をもって取り組んでいるのか?
自身が学びになった部分をこれから紹介していきます。
ランニングを継続する3つのコツ
『走ることについて語るときに僕の語ること』から学んだ、「ランニングの継続」に役立つ3つのコツを紹介したいと思います。
その1|「気持ち良い」と感じたところで走り終える
1つ目に紹介するコツが、
「気持ち良い」と感じたところで走り終える
という考え方です。
作品のなかで、村上春樹氏はこのように述べています。
速く走りたいと感じればそれなりにスピードも出すが、たとえペースを上げてもその時間を短くし、身体が今感じている気持ちの良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。長編小説を書いているときと同じ要領だ。もっと書き続けられそうなところで、思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業のとりかかりが楽になる。
村上春樹 著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋 2010年)pp.17-18.
走り始めた当初の自分には、上記の考えが思いつきませんでした。
そのためランニングが長続きせず、「三日坊主で終わっては、無理やり気合いを入れて走り直す」ということを繰り返してきました。
試しに文章に書かれた方法で走ってみると、
- 「意欲」のキープ(もっと走りたい!というポジティブな感情が保てる)
- 「コンディション」のキープ(走りすぎないことで、疲れが溜まりにくく、体調が安定しやすい)
といったメリットが得られ、翌日のランニングに対する「心理的・身体的なハードル」を下げることに成功。
継続が楽になった結果、気づけば10年ランニングを続けることができました。
ランニング初心者の方が、「ランニングを習慣化」するための手段として、おすすめの思考法です。
次の日のために「あえて」余力を残すことで、物事が長続きするというわけです。
その2|「走る理由」を大事にする
2つ目に紹介するコツが、
「走る理由」を大事にする
という考え方です。
本のなかで、村上春樹氏はこのように述べています。
もし忙しいからというだけで走るのをやめたら、間違いなく一生走れなくなってしまう。走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。
村上春樹 著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋 2010年)p.111.
僕自身、仕事で忙しかったり、疲れたりした日は「走れない理由」を探してランニングを休んでいました。
そんなとき、「走れない理由」はたくさんあっても、「走る理由」を大事にしよう、という村上春樹氏の前向きなメッセージに出会い、ランニングに対する意識が変化。
「走る理由」を優先させ、そのうえで「走れない理由」の解決に向け、積極的に行動するようになりました。
- 例:「仕事で帰宅時間が遅くなってからだと、走る気が起きない…」
- 解決策「走る時間を安定して確保するために、朝ランを開始」
- 例:「冬の寒い時期は、外を走る気になれない…」
- 解決策「防寒対策の施されたランニングアイテムを用意する」
- 例:「走ってはいるけど、成長の手応えが掴めず、やる気が出ない…」
- 解決策「ランニングノートを書いて、自分の成長を可視化する」
上記の行動を実施したおかげで、ランニングを始めた頃の目標であった「フルマラソン完走」や「サブ4達成」をクリアすることができました。
何をするにしても「できない理由」は存在します。
「やりたい理由」や「やるべき理由」を尊重し、前向きに「解決策」を考えるように心がけましょう。
当ブログ(ランイズム)では、ランナーの問題解決に役立つ情報を発信しています。
ランに関する悩みのある方は、ぜひチェックしてみてください。
その3|「他人」をモチベーションにしない
最後、3つ目に紹介するコツが
「他人」をモチベーションにしない
という考え方です。
村上春樹氏は、作中このように述べています。
「あいつには負けたくない」というようなモチベーションで走る人も中にはいるかもしれないし、それはそれで練習の励みにはなるだろう。しかしもし仮に特定のライバルが何かの事情でそのレースに参加できなくなり、その結果レースを走るためのモチベーションが消滅(あるいは半減)してしまった、というのではランナーとして長くはやっていけない。
村上春樹 著『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋 2010年)p.24.
自分自身、思い当たる節が多く、ハッとさせられる言葉でした。
というのも、ランニングの「タイムや練習量」を、ほかのランナーと比べてしまっていたからです。
それによって、
- 相手にモチベーションが左右される
- 相手に負けたくない焦りから、無茶な練習をおこないケガをする
といったミスを何度も経験。
しかしこの言葉がきっかけとなり、ランニングへの「向き合い方」を見直すことができました。
その結果、自分なりの納得感や達成感を重視した、「自分軸のランニングスタイル」へと転向。
マイペースで走れるようになったおかげで、足のケガも減り、10年経った今でも健康にランニングを楽しめています。
他者に依存しない、「独自のモチベーション」を見つけましょう。
まとめ
この記事では、
『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹/著)
のなかから自身が学んだ、「ランニングの継続」に役立つ「3つのコツ」を紹介してきました。
- 「気持ち良い」と感じたところで走り終える(余裕を残すことで、物事への取り組みが長続きする)
- 「走る理由」を大事にする(走れない理由を言っても切りが無い、それよりも走る理由を大事にしよう)
- 「他人」をモチベーションにしない(相手に依存しない、自分軸のモチベーションを見つけよう)
ランニングが続かない…
と悩んでいるランナーは、村上春樹氏の「考え方」を活かすことで、「継続」が楽になるはずです。
ぜひ自身のランニングに応用してみてください。
今回紹介した『走ることについて語るときに僕の語ること』という書籍は、メモワール(個人史)であり、ランニングのハウツー本ではありません。
ですが個人的には、
- 「ランニング初心者」=なるほど~! と学びになる
- 「ランニング経験者」=その気持ち分かる! と共感を楽しめる
「すべてのランナーにおすすめな一冊」と言えます。
気になった方は、ぜひ一度読んでみてください。